SPECIAL

布長

目利きにも惚れられる目利きは、
美味しいマグロで、
子どもの未来も明るくする。
これから豊洲はどうあるべきか。東京魚市場卸協同組合の副理事長として市場を牽引し続けている、布長の社長である本間淳一さん。「魚がしコンシェルジュ認定講座」や「おさかなブレインコンシェルジュ魚食育資格講座」講師として魚食推進や食育活動に注力し、さらに子ども向けのイベントなども意欲的に開催している。そんな世の中の“目利き”でもある、本間さんに話を伺いました。
仲卸にならなかったら、
パイロットか、歴史の研究家に。
飛行機が好きだったんでパイロットになりたいとか。小学生のときから歴史小説を読み漁っていて、歴史の研究もしてみたいとか。漠然と考えていたこともありました。でも、小さいときから築地の市場に連れてこられて、年末や夏休みはよく手伝いをしていたからね。結局は、成長するにしたがって父親から仲卸を継ごうかと。自分なりにはごく自然な姿だったと思うし、違和感はなかった。でも、働くのは大学を出てからっていうスタンスでいたんです。だけど、なぜか父親がレールを敷いていたのは、高校卒業からだった。
修行は、
「仲卸」ではなく「卸売」へ。
「あした試験があるから行って来い」と。既に親父と就職先の会社とで下話があって。市場で魚を“仲卸に販売する”卸売会社に就職。当時は、普通なのかと思っていたけど、じつは仲卸の息子が、セリ人などを務める卸売会社へ修行に行くって珍しかった。どちらかと言ったら同じ職種の仲卸さんで修行するのが多かったみたい。その卸売会社で2年。いろいろと見たかったけど、20歳のときに布長へ。卸売会社を辞めて布長に入るまでの2か月間は、修行期間が終わったということで、いろんな市場を見にいってきた。自分の意思で北海道から沖縄まで。遊び半分だったけどね(笑)。
卸売の経験が、
マグロを見る目に。
布長に入って最初は、セリに参加するってことが一番。僕は親父の息子なんで、他の若手社員や年配社員に気を遣いながら、いかに自分が選んだ魚を買ってくるかがテーマだった。その魚で社員のみんなに、自分の実力や存在を示さないといけない。そんなときに役に立ったのが、前職の卸売での経験。高校を出たばかりで何もかも分からないなか、三陸でマグロが大量に獲れてね。23時くらいから出社して次の日の夕方まで、ずっとマグロと一緒。これが2か月間も続いて、おかげでマグロに関しては本当に勉強させてもらった。質を見るだけでなく、他店の仲卸が何を考えて、どう動くのかということもね。この経験から、布長でもすぐに何本か買うのを任されるようになって。こいつ、結構面白いぞ、安く仕入れてくるぞって思ってもらえるようになっていった。
文化を感じて動く。
それが真の目利き。
魚を見るときに大切にしているのは、お客さんのイメージ。たとえば、何百年も続く料亭なのか、小料理屋なのか、どういうお店なのかから考えて、そのニーズを頭に入れる。とんでもなく高い魚を「お客さんにいいですよ」って言ってもダメ。お客さんの欲しがっている価格帯だとか魚のレベルだとかを汲みながらセリに参加している。それが、目利きの大切なところだと思う。値段とか関係なく、いい魚は経験していけば分かるようになる。だから、真の目利きというのはお客さんたちの文化を感じて、動けるってことなのかな。「目が利く」って、相手が居ての話だからね。
やっぱり、
食べた感想はうれしい。
お客さんが喜んでくれるのは、うれしいよね。ECサイトでも魚の販売をはじめたので、最近は一般消費者の声も自分たちに届くようになった。それで「このマグロは食べたことがなかったけど、こんなに美味しいんですね」とかね。これまでもみんな、魚に対していろいろな想いを持ってくれているんだけど、お互いにその想いが届きづらい壁みたいのを感じていて。でも、世の中の状況から接する機会ができて、親しみを感じられるようになった。やっぱり、人が喜んでくれることに限ると思う。
これからのこと。
豊洲市場ブランドをつくりたい。
築地ではブランドを築いてきたけど、豊洲は豊洲でブランドづくりをしていかないといけない。そのなかで、SDGsじゃないけども、そういうことも考えていく必要があると思っている。あとは、もっと簡単に輸出ができたりだとか。豊洲への移転という話が出たのも20年以上前で、当時、市場の若手が何人かで集まり、新しい市場のコンセプトについて話し合った。せっかく成田空港と羽田空港の真ん中にあるわけだから、「ハブ市場的に輸入の手続きが簡素化された市場にできればいいね」とか。難しいのは仲卸の一部だけでなく、すべての仲卸が国際化対応できるかってこと。それができる仕組みがあれば、市場全体が活性化するし、ブランドにもなる。市場のみんなでそういう風に持っていけたらいいんだけどね。
おうちご飯を、
魚食の機会に。
とは言え、今、一番大事なところは内需だね。買い出しに来る人を増やして、日本のみなさんにもっと魚を食べてもらえるようにしたい。魚食推進についても20年くらいやって、まだまだ浸透しない部分があって。でも、コロナ禍を経験したことで、もっと魚食を広めるために、自分たちだからアピールできることも、国や行政に働きかけられることもあるかなと。たとえば、僕は家で食卓を囲んで、みんなでご飯を食べるのって大事だと思っている。だから、その場でもっと魚を食べてもらえるような取り組みとか。今後の世の中を考えても、リモートワークは行われていくと思うし、仕事のあとの飲み歩きも、以前のようにまで戻ってくるかは分からないからね。
そして、
子どもたちの未来へ。
魚食推進とともに、取り組んできたのが食育。これまでも親など大人だけでなく、子ども向けにも魚について知って食べてもらうイベントなども開催してきた。これからもキーワードのひとつは、「子ども」。子どもの舌って、本当にすごい。美味しいものを食べれば忘れない。それに、魚の持つ栄養素は脳の発達に役立つし、免疫力をあげることにも貢献できると思う。だから今後、もっと子どもたちと触れ合う機会を増やして、魚を好きになってもらう機会を増やしていきたい。そして、魚を食べてもらうことはもちろん、地球の資源問題や環境問題についても知ってもらいたい。それが、魚や市場の未来のために、そして子どもたちの未来のために、僕ができることだと思ってる。
仲卸コラム
本間社長に聞きました!
「豊洲市場の必要性」とは
市場として、そこに品物が集まって、プロたちの目があって、ものの良し悪しが決まるのは大切なこと。けど、そこに安心安全があることが一番大切だと思っている。豊洲市場には、いろんな衛生の先生たちが常駐して、良い品質で消費者のみなさんの手元まで届くためのチェック機能がある。特に生ものを扱っているわけだから。中毒の問題だとかいろいろあるんだが、これまで何百年近く歴史があるなかで、そういう問題がおきたことはほぼない。そこはプロたちが魚の扱いをしっかり見ていて、きちんとチェックをしている素晴らしさがあるからだと思う。