日の出前――うっすら明るくなってきた卯月(旧暦の四月)の空の下で、今日も日本橋の魚河岸は賑わっている。

「鰹だ! 鰹をくれ!」

 人波をかき分けてやってきた男が、板舟の前に立つなり叫んだ。

 板舟とは、魚を並べて売るための板である。魚問屋の軒先から通りへせり出しており、幅二尺三寸(約七〇センチメートル)、長さ五尺(約一五〇センチメートル)と定められていた。

 

「急いでくれよ! 早くしねえと、空のてっぺんまで日が昇っちまうぜ!」

 向こう鉢巻きをしめ、片肌脱ぎで紺の腹掛をつけているこの男は、鰹売りである。毎朝、息を切らしながら魚河岸へ駆けつけてきていた。

「足の早え鰹は、四つ(午前十時頃)を過ぎると、長屋のかみさんたちに値切られちまうんだ。卯月の間に鰹を食わなきゃ野暮だってんで、月が替われば見向きもしなくなる連中もいるしよぉ」

「まあ、あせるなって」

利々蔵は鰹売りの肩に手を置き、その顔を覗き込んだ。小柄な利々蔵はちょいと相手を見上げる形となるが、幼子をなだめすかすような心持ちで笑いかける。

「高値がついた初鰹に手を出せなかったもんが、少しでも鰹を値切ろうとしているのは知っているがよ。売れ残った鰹を買って、腹痛を起こすもんが毎年大勢出るだろう」

 鰹売りはうなずいた。

「誰だって、腹痛にはなりたくねえ――といって、この時季の鰹を逃したくもねえ。値切るのにも限度があらぁな」

 初物好きの江戸っ子が、特に夢中になったのは初鰹である。

 初物を食べると七五日寿命が延びるといわれているが、その中でも鰹は特別で、七五〇日も寿命が延びるともてはやされていた。

 江戸っ子にとって、初鰹は、女房を質に入れてでも金を作り、口にしたい代物なのである。

 厳密にいえば「初鰹」とは、春から初夏にかけて最初に魚河岸に入った鰹を指すのだが、いち早く鰹を食べたと見栄を張りたい江戸っ子たちは、出始めの鰹を非常に珍重したのである。

「新鮮な鰹を三枚に下ろして、刺身を引いて、辛子をつけて食べるのが世間じゃ乙とされているがよぉ」

 利々蔵の言葉に、鰹売りは落ち着きを取り戻した表情で「あたりめえだ」と声を上げた。

「鰹に辛子は付き物だろう。辛子醤油に辛子味噌――辛子で食べるのが、この江戸の常識ってもんだ」

「だが、おれは、わさび醤油も合うと思うぜ。塩は、まだ試しちゃいねえが――薬味も、葱、生姜、にんにくと――」

 目を丸くする鰹売りに、利々蔵は笑みを深めて続けた。

「新しい美味さを編み出して、長屋のかみさんたちに教えてみな。みんなありがたがって、値切るのを忘れちまうぜ」

 鰹売りの顔にも笑みが浮かぶ。

「それじゃいっぺん、騙されたと思ってやってみようかな」

「おい、『騙された』はよけいだろうがよ」

 軽口を交わしながら鰹の代金と茶屋札を利々蔵が受け取ると、鰹売りは足取り軽く去っていった。

 茶屋札とは、茶屋と買い出し人の名前が記された札である。

 棒手振たちは、かさばる天秤棒や笊などを、魚河岸の近くにある棒手茶屋へ預けている。

 何枚もの茶屋札を懐に入れた棒手振たちは、魚問屋を回って魚を買う時、代金とともに茶屋札を仲買人に渡すのだ。仕入れた魚は「使い軽子」と呼ばれる荷運び人によって、棒手茶屋へ届けられる仕組みになっているのである。

 

「おい利々蔵、うちでの商売もすっかり板についてきたじゃねえかよ」

 振り向けば、店の入口に立っていたのは鯔背銀杏の髷がよく似合う美丈夫(びじょうふ)――この恵比寿屋の跡取り、藤次郎であった。

 江戸一番の目利きを目指す利々蔵は、実家の魚屋を離れ、ここ本小田原町にある魚問屋の恵比寿屋で昨年末から修行させてもらっている。

 三つ年上の藤次郎はとても面倒見がよく、「魚河岸から買われていった魚がどう扱われているのか知っていなきゃ駄目だ」と言って、さまざまな店へ利々蔵を連れていってくれる。男前で、腕っ節も強い。兄貴分として申し分のない男だ。

「張り切って、しっかりやんな。江戸一番の目利きと謳われていた亡き祖父さんに、早く追いつくんだぜ」

「へい!」

 両手の拳をぐっと握り固めて、利々蔵はまっすぐに藤次郎の目を見た。藤次郎は目を細めてうなずくと、中へ戻っていった。

 再び板舟の前に立つと、いつの間にか昇っていた日輪が向かいの屋根の上に見えた。空には雲ひとつない。汗ばんだ肌に、初夏の風がぬるく感じられる。

「暑くなりそうだぜ」

 利々蔵は気合いを入れるため、ぱんっと両手を打ち鳴らした。

 通りを行き交う人々の波が、だいぶ引いてきた。板舟の上の魚も残りわずかである。小鯛、鯵、かさごなどが数匹載っているだけだ。

 板舟の脇に突っ立っている店の小僧に向かって、利々蔵は拳を振り上げた。

「おら、おら、ぼさっとしてるんじゃねえよ! さっさと水を運んでこいや! 魚が煮えちまうだろうがよ!」

 利々蔵は、かーんと響く声を張り上げる。

「売り物にならなくなったら、どうするんでぃ。最後の一匹まで大事に扱えよ!」

「へいっ、すいませんっ」

 小僧は店の奥へすっ飛んでいくと、手桶をふたつ提げて駆け戻ってきた。ひとつ地面に置くと、もうひとつの手桶に柄杓を突っ込んで、勢いよく板舟の上の魚に水をかけ始める。夏の暑さから少しでも魚を守るための工夫だ。

 ふたつの桶が空になると、小僧は再び水を汲みに走った。裸足で駆けていく足の裏は泥だらけである。

 おれも小僧の頃は、よく親父に怒鳴りつけられて、裸足で売り場を駆け回っていたなぁと懐かしく思いながら、利々蔵は自分が履いている下駄を見下ろした。

 世間では、下駄は雨の日の履物と相場が決まっているが、魚河岸では違う。年がら年中、足元がぬかるんでいる魚河岸で働く男たちは、常に下駄を履いているのである。

おめえも早く下駄を履かせてもらえるようになれよと思いながら小僧の背中を見守っていると、背後から「あのぉ」と声が上がった。魚河岸には似つかわしくない、女の声である。

 振り向けば、同じ日本橋にある旅籠、朝日屋の女料理人ちはるが立っていた。

 まだ若いが、よく利く鼻と持ち前の根性で、客のためにさまざまな料理を生み出しており、この魚河岸でも顔を知られている。利々蔵は恵比寿屋に来てすぐの頃、藤次郎から朝日屋の面々を紹介されていた。

「よぉ、どうした。今日はいつもより遅いじゃねえか。板長の慎介さんは一緒じゃねえのかい?」

 ちはるは殊勝な顔でうなずいた。

「新しい鰹料理を考えたいと思いまして――」

 やけに切羽詰まった表情で、ちはるは板舟の上をじっと見つめた。

「ご覧の通り、鰹はもうねえよ」

「そうですよね……」

 ちはるは板舟の前にしゃがみ込んだ。偶然にも、鰹を並べていた辺りである。よく利く鼻で、鰹の残り香を嗅ぎつけたのだろうか……。

「いい案がなかなか思い浮かばなかったもので、実際に鰹を見て考えたほうがいいかと思ったんですけど……あれこれ悩んでいるうちに、どんどん時が過ぎてしまって……」

 ちはるは大きなため息をついた。ひどく思い詰めている様子だ。

 利々蔵もしゃがんで、目を合わせようとしたが、ちはるはじっと板舟を見つめるばかりで一向に視線が交わらない。

「おいおい、しけた面してるんじゃねえよ。魚河岸で『時化(しけ)』だなんて、縁起でもねえやな」

 ちはるは「はい」と返事をしたが、その声がまた辛気くさい。

「ったく、しょうがねえなぁ」

 利々蔵は立ち上がった。

「で、おめえの言う『新しい鰹料理』ってのは、いったいどんなんだ? なかなか思い浮かばねえと言ったって、ちょっとは考えたんだろうがよ」

 ちはるも立ち上がった。

「何かと組み合わせたらいいんじゃないかと思ったんですけど、その何かが思い浮かばないんです」

 利々蔵は首をかしげた。

「おめえの言ってる組み合わせってのは、薬味のことかい?」

「もちろん薬味でもいいんですけど――葱、生姜、にんにくは、もうやりました。辛子で食べるのも、もちろん美味しいんですけど――でも、それだけじゃありきたりだと思って――」

 利々蔵は胸の内で唸った。

 こいつも、まったく同じことを考えていやがる――。

「魚の持ち味をもっと引き出す方法はないか、探してみたいと思うんです」

 ちはるは、ぐっと利々蔵の顔を覗き込んできた。先ほどまでの弱々しさはすっかり消え失せ、ちはるの目には強い力が宿っている。

「朝日屋には、いろんなお客さんが来ます。京や大坂から来る人、信州や甲州から来る人――旅をしてきたみなさんは、故郷を懐かしみながらも、故郷とは違うものを求めていらっしゃいます。旅の醍醐味は、やっぱり日常との違いを楽しむことですから。その旅の中で、あたしは朝日屋の料理も楽しんでもらいたいんです」

 ちはるは自分に言い聞かせるように続ける。

「こんな美味い料理があったのかという驚きを感じてもらえれば、きっとお国に帰っても、朝日屋を思い出してもらえます。朝日屋で食べたあれが美味しかった、これが美味しかったと、うちの料理がいつまでもお客さんの胸の中に在り続けられたら、それはすごいことだと思いませんか」

 ちはるは目を輝かせて、空を仰いだ。

「あれこれ試して、失敗するかもしれない。でも、挑むことをやめちゃいけないと思うんです。先人たちだってきっと、あがきながら前へ進んで、いろんな料理を生み出してきたんでしょう? あたしも、できることは何でもしないと――お客さんのために――」

 利々蔵は目を細めた。

 いい面構えじゃねえか――。

 利々蔵の目利き魂も燃え上がる。

 目利きとは、上物を見極めることだけを指す言葉ではない。客が何を求めているのか見極め、差し出せる力を持つ者が、真の目利きなのだ。

 利々蔵は改めて真正面から、ちはるを見つめた。

 男だとか女だとか、そんなのは関係ねえ。こいつは立派に、朝日屋の料理人だ。いつか番付に載るような料理を作り出すかもしれねえ――。

 江戸一番の目利きを目指す自分も負けてはいられぬと、利々蔵は気を引きしめた。

 魚の売り手として、ちはるが求める答えをともに考えたい。

 もし、おれがちはるならどうする。各地から訪れる旅人たちのために、朝日屋ならではの一品を出すなら――。

 お題は鰹だ。

 もし自分が朝日屋に泊まる客なら、いったいどんなふうに食べたいかとも考えてみる。例えば、遠国から何日もかけて東海道をやってきて、日本橋に辿り着いたとする。疲れた。水が飲みたい。腹も減った。早く、どこかで休みたい。湯屋で汚れを落として人心地ついたら、絶対に、きゅーっと酒を一杯やる。

「やっぱり、酒の肴に欲しくなるのは刺身かな。この時季なら、何と言っても鰹……辛子や生姜以外でとなると……」

 ふと、恋女房さくらの言葉が頭によみがえる。

 ――生姜は血の巡りをよくするから、甘酒の中にしぼり汁を垂らして飲むでしょう。夏を乗り切るためには欠かせないわ。このところ暑くなってきたから、うちの店でも甘酒がよく売れるようになってねえ――。

 茶屋に勤めているさくらは毎日大勢の客と接して、さまざまな出来事を見聞きしている。

 ――昔はよく冬に甘酒売りが来ていたって、駿河屋のご隠居がおっしゃってたわ。だけど明和(一七六四~七二年)を過ぎたら、いつの間にか一年中売り歩くようになって、今ではすっかり夏の風物詩だって――。

 死んだ祖父さんも、昔同じようなことを語っていたと思い出す。

「今は甘酒も夏が旬か……」

 利々蔵の呟きに、ちはるが目を見開いた。

「甘酒――鰹と甘酒の組み合わせはどうでしょう!?」

 利々蔵は仰天する。

「おい、まさか鰹に甘酒ぶっかけて、客に食わせようってんじゃねえだろうな!?」

 ちはるは真剣な表情でうなずいた。

「漬けるんです。三枚に下ろして、皮を引き、食べやすい大きさに切って――塩を馴染ませて余分な水気を取ってから、甘酒に漬けたほうがいいですね。どれくらい漬けておくかは、いろいろ試してみないとわかりませんが――おそらく四半時(約三〇分)も漬けておく必要はないと思います」

 利々蔵の口の中に、甘酒と鰹の味が、勢いよく渦巻く波のようによみがえってきた。思わず舌を動かして、口の中を舐め回す。

「麹を使った浅漬けのような感じになるのか……?」

 ちはるも鰹と甘酒の味を思い返しているかのように、唇を引き結んで小さく口を動かした。

「麹とご飯と塩を混ぜた物に魚や青物を漬ける『甘漬け』もありますから、甘酒もいけるんじゃないかと思います。甘酒も、もち米と米麹を使いますから」

 小さく何度もうなずいて、ちはるは独りごちた。

「薬味はやっぱり必要ね。葱か生姜――みょうがや紫蘇でもいいか――煎り酒を添えてもいいかもしれない――山かけもいいな――」

 利々蔵は舌先に気を集めながら、さらに味を思い浮かべた。

「血合いを少し残してもいいかもしれねえぞ」

 ちはるが、ぎょっとした顔になる。

「血合いを入れたら、生ぐさくなりませんか!?」

 利々蔵は、かぶりを振った。

「獲れたての鰹を食ったことのないやつが、目を閉じて新鮮な刺身を食べると、鰹と気づかねえ場合がある」

「まさか、そんなことが――」

「あるのさ」

 利々蔵は口角を引き上げる。

「江戸っ子は、さっぱりした味わいの魚を好む。鰻なんかは、こってりした蒲焼を食ったりするくせによ。鰹はやっぱり、すっきりした風味の初鰹が最高だと言うやつが多いんだ――が、実はその陰で、味の濃い秋の鰹を好むもんもいるんだぜ。そんなやつらには、初鰹の血合いを入れてやったほうが好まれるんじゃねえのかい。血合いは、鰹の風味そのものだからな」

 ちはるは納得したような表情になる。

「さっぱりとした味わいを好むもんに対しても、血合いまで食べられる新鮮な鰹ってえのは、売り文句になるんじゃねえのかい。朝日屋の地の利を活かせるぜ」

 ちはるは、はっと息を呑んだ。

 朝日屋は、この魚河岸からほんの五町(約五五〇メートル)ほどの場所にあるのだ。

「足の早え鰹の血合いを出せる店なんざ、そうそうねえぜ。海から離れた場所に住んでいるもんは、驚くんじゃねえのか?」

 ちはるは大きくうなずいた。

「甘酒を使えば、口当たりも変わりそうです。鰹の旨みを、さらに引き出せるかもしれませんね」

 利々蔵の唇がゆっくりと弧を描く。

 面白れぇ――。

 わくわくして、武者震いしそうだ。

「新しい鰹料理ができ上がったら、おれにもぜひ食わせてくんな。おめえの料理を食うことは、おれの修行にもなる」

「はい! 利々蔵さんに負けないよう、あたしも修行に励みます!」

 ちはるは踊るような足取りで帰っていった。

 そして間もなく、恵比寿屋の魚も売り切れる。

 仕事が終わり、湯屋で汗を流すと、利々蔵は客の店へ顔を出した。藤次郎の教えを受けてから、自分一人でも連日あちこち回っている。自分の売った魚がどんなふうに使われているのか見聞きして、客の好みなどを覚えているのだ。

 さくらの仕事が終わる頃には茶屋まで迎えにいき、二人並んで帰路に就く。

「今日、久しぶりに筆屋のご隠居さんがいらしたのよ。腰が痛くて歩けないって聞いてたんだけど、やっと楽になったそうでねえ。お元気になったお顔を見て、安心したわ。それと、紺屋の旦那さんがね――」

 さくらの他愛ない話に耳を傾け、長屋へ向かいながら、利々蔵はじんわりと胸に広がる幸せを噛みしめた。

 客と語らいながら魚を売って、さくらと暮らす日々は、かけがえのない宝だ。

 何があっても守ってみせると、胸の内で固く誓う。

長屋が近づいてくると、ぷぅんと魚を焼く香ばしいにおいが漂ってきた。

「あっ、忘れてた! 今日は隣のよねさんが鯵の干物を分けてくれるんだったわ。この間、鰹の刺身を分けてあげたお礼だって」

 駆け出そうとするさくらの腕をつかんで、利々蔵は笑った。

「慌てるな。ゆっくり行こうぜ。干物は、おれが焼いてやるからよ」

 鯵の干物を思い浮かべると、利々蔵の口の中にじゅわりと唾が湧いた。

 高値のついた初鰹じゃなくても、美味い物は美味い。さくらと一緒に味わうのなら、なおさらだ。

 長屋へ帰り、鯵の干物を食べる頃には、とっぷり日暮れているだろう。

 食べ終えて、茶碗を片づけ、寝支度をして、行燈の灯りを消したら、今日も終わっていくのだ。そして夜明け前から起き出して、また魚河岸へ行く。

 利々蔵は自分の手を見つめた。

 自分の売る魚も、どこかで誰かの幸せに繋がっている。

 美味い物を味わえる喜びを、この江戸中に――いや、日本中に広げたい。

 そのためにも、いつか必ず立派な目利きになってみせる。

 ふと振り仰げば、茜色に染まった空から荘厳な光が降り注いでいた。

 利々蔵は目を細める。

 明日の朝日も、きっと美しいだろう。

※本作は、書き下ろしになります

 

朝日屋の“ちはる”が考案する初鰹の食べ方

高田在子(たかだありこ)

作家。神奈川県横浜市出身。『開花請負人 忍桜の武士』(白泉社招き猫文庫)でデビュー。著作に『はなの味ごよみ』シリーズ(角川文庫)、『まんぷく旅籠 朝日屋』シリーズ(中公文庫)などがある。



▼著者からのメッセージ
『まんぷく旅籠 朝日屋』シリーズ第3巻に、目利き協会のマスコットキャラクターである利々蔵が登場します。目利き協会と中央公論新社の協力を得て実現した、業界の垣根を超えたコラボ企画です。
『まんぷく旅籠 朝日屋』シリーズでは、人と人とを繋ぐ「食」を丁寧に描写していきたいと思っています。主人公ちはるたちが作り出す料理や、おもてなしの心なども、お楽しみいただけましたら幸いです。

利々蔵 誕生秘話

目利きを、世界へ!
と志をかかげたときに、『目利き』って何?、何をしてる人?ということが 日本人でも知る人が限られておりました。
知ってもらうにはどう表現したらよいか?と考え、目利きを表すキャラクターを作ることにいたしました。

■名前『目利きの利々蔵』について
江戸時代に今の豊洲市場の元になる魚河岸ができたところから、そうした歴史的背景も伝えるよう、江戸時代に生きるキャラクターとしました。

『いなせ丁髷(ちょんまげ)』をご存知ですか?
『いな』という魚がいます。ボラの稚魚ですね。『いな』の背中は少し曲がっていて、いなの背中のようにちょんまげをちょっと曲げて結うのが粋ということで、魚河岸の若衆がよくこのいなせちょんまげを結っておりましたが、ただかっこよいというだけではなく、ここには、魚河岸の若衆がいなが大きくなってボラになるよう早く出世できるようにという願いが込められていたと、聞いております。
なので、利々蔵もいなせ丁髷です。

■キャラクターのイラストについて
築地市場時代の売り子で魚がしコンシェルジュの女性に描いてもらいました。

キャラクターはできたけどまだ命が吹き込まれていない状態のまま過ぎ、東京築地目利き協会5周年を記念して、この度、魚がしコンシェルジュでもある小説家高田在子先生に命を吹きかけていただきましたことは、本当に喜ばしく、感謝でいっぱいです。

また、今回のお話のモデルは、現代の豊洲市場の目利きの一日です。真夜中に起き、お客様がどうこの魚を扱うかをイメージして魚を選定する。仕事が終わるとお客様の店で自分が売った魚がどのように調理されるかを見、再び真夜中に市場に出てお客様に合った魚を選定する。この姿勢、本当に尊敬しております。

利々蔵ショートストーリーで、目利きを少しでも知っていただけたら嬉しいです。
代表理事 佐藤篤子

『まんぷく旅籠 朝日屋』第1巻

『ぱりとろ秋の包み揚げ』

お江戸日本橋に誕生したワケあり旅籠
お腹も心も満たされる再出発の物語

▶販売ページ(中央公論新社 公式サイト)

登場する料理
揚げ出し大根 / 鯛の塩焼き / 牡蠣飯 / 茶碗焼き / 秋の包み揚げ / 紅葉蛤 / 人参汁 / 玲瓏豆腐 など

▶試し読み

『まんぷく旅籠 朝日屋』第2巻

『なんきん餡と三角卵焼き』

今日は泣いても明日は笑顔 おいしい料理でおもてなし!

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登場する料理
塩鮪と烏賊の刺身
小蕪の海老そぼろ餡かけ
ねぎま鍋 / 鯵のつみれの澄まし汁 / 小蜜芋 / なんきん餡と三角卵焼き / 青海豆腐 / 蕎麦がき など

▶試し読み

『まんぷく旅籠 朝日屋』第3 巻

『しみしみがんもとお犬道中』

ちはるVS箱入り不良娘とおかげ犬!?

▶販売ページ(中央公論新社 公式サイト)

登場する料理
烏賊の唐辛子炒め / 叩き牛蒡
 / 集め汁 / 鰤と大根の煮つけ / 牡蠣の胡椒煮 / 鮪のそぼろどんぶり / 煮穴子 / がんもどきなどが入った太煮 など

▶試し読み
利々蔵の初登場シーン